言語の系統と、単語の借り先は別

英語はゲルマン語派の言語です。ラテン語やフランス語から語彙を取り入れてきたことは、その系統と両立します。現代ドイツ語が英語の親という意味でもありません。

英単語の語源を調べると、ラテン語やフランス語が何度も出てきます。それなのに「英語はゲルマン語派」と聞くと、話が食い違って見えるかもしれません。ここでは、言語が受け継いできたものと、後から取り入れた単語を分けて見ます。

英語とドイツ語は、共通の祖先を持つ親戚

英語はインド・ヨーロッパ語族のゲルマン語派に属します。ドイツ語もその仲間ですが、現代のドイツ語が英語の親という意味ではありません。どちらも、もっと古い共通の祖先へさかのぼる言語です。

英語の German は「ドイツの」、Germanic は「ゲルマン語派の」などを表します。この二つを同じものとして読むと、「英語はドイツ語からできた」という誤解につながります。

家系を見る図と、単語の移動を見る図
言語の系統
共通の祖先 → ゲルマン語派 → 英語・ドイツ語など
単語の借用
ラテン語やフランス語など → 英語の語彙へ

上は言語どうしの歴史的な関係、下は単語が取り入れられた向きです。途中の時代や分岐は省略しています。

ラテン語由来の単語があっても、英語がラテン語の子になるわけではない

ある言語の話し手が、別の言語から単語を取り入れることを「借用」といいます。借りた単語が増えることと、その言語がどの系統に属するかは別の問いです。

日本語で「コーヒー」や「メール」を使っても、その一語だけで日本語全体の家系は決まりません。同じように、英語の語源欄にラテン語が出てきたことだけで、英語をラテン語から生まれた言語とは説明できません。

英語のラテン語由来の語には、ラテン語から取り入れたものも、フランス語を経由したものもあります。宗教・学問などでのラテン語の使用や、英仏の長い接触を通じ、異なる時期と経路から語彙が加わりました。「ラテン語由来」という一言の中にも、複数の道があります。

royalを辞書でたどると、途中にフランス語がある

royal は「王の・王室の」を表す形容詞です。Merriam-Websterの語源欄では、中英語、Anglo-French、ラテン語 regalis へと来歴をたどれます。

ここで「ラテン語にさかのぼる」と「ラテン語から英語へ直接入った」を区別します。辞書が途中にフランス語を挙げているなら、その経路を飛ばさず読むのが大切です。

語源欄の from は由来を、akin to は関連する語を説明するときに使われます。関連語としてドイツ語が載っていても、それだけで「英語がドイツ語から借りた」とは限りません。矢印の向きを決める前に、辞書が何を説明しているのかを見ましょう。

借用語と同根語は、同じものを分ける分類?

借用語は、ほかの言語から取り入れた語という、伝わり方に注目した呼び方です。同根語は、語どうしが共通の祖先につながるという関係に注目します。この二つは、語を必ずどちらか一方へ入れるための分類ではありません。

借用された語にも、ほかの語と共有する古い語源があります。「どこから入ったか」を確かめたあと、さらに古い関係をたどれることもあるのです。辞書の語源欄では、直接の借用元、さらに前の形、関連する語を一列に混ぜずに読みます。

自分のメモには、借用の向きを矢印で、共通する祖先との関係を枝分かれで書くと区別しやすくなります。見た目が似ているだけの段階なら、「関係は未確認」として残しましょう。単語の音や文字が近いことだけで、その道筋は決まりません。

語源の割合より、一語の経路から読む

「英語の何割がラテン語?」という数字は、どの辞書の、どの語を数えるかで変わります。大きな辞書に載る語の内訳と、日常会話に現れる語の内訳も同じではありません。出所の分からない円グラフを覚えるより、気になった一語を追うほうが、今の疑問を確かめられます。

辞書を開いたら、「この語の来歴を説明しているのか」「英語全体の系統を説明しているのか」を分けてみてください。この区別がつけば、似ている単語どうしを見つけたときにも、共通の祖先か、借用か、単なる見た目の近さかを考える足場になります。

語源欄の矢印を、言葉で説明してみる

royalの来歴にフランス語とラテン語が出てきたら、途中の言語を飛ばさず日本語で説明してみましょう。

「ラテン語にさかのぼり、フランス語を経由して英語に入った語」と説明できれば、語の起源と経路を区別できています。英語の文章を作る練習へ急がなくても構いません。

本文を見ずに考えてみる:辞書でラテン語由来の英単語を見つけたら、「英語はラテン語から生まれた」と結論できますか。

考え方と答えを確認する

その一語の来歴から、言語全体の系統は決められません。借用語の説明と、英語が属するゲルマン語派の説明を分けます。

意味としくみを確かめた資料