AIで英語メールの下書きができた。文法も丁寧さも問題なさそうなのに、「この日までに納品します」という一文に目が止まった。自分が頼んだのは、在庫を確認して返事をするという連絡だったはずです。
送信前には、英文の読みやすさとは別に、元の依頼・受信メール・社内で確認した事実と一文ずつ照合します。特に、数字が合っているかだけでなく、その数字が「回答する日」なのか「発送する日」なのかまで確かめます。
ここでは、AIで用意した下書きを人が点検するための7項目を、一通の例で確認します。登場する案件、数字、点検用の下書きはすべて編集部が作った架空の例です。特定のAIの実際の出力や、製品ごとの誤りやすさを検証した結果ではありません。
下書きの横に、送ってよい事実だけを置く
先に英文を直し始めると、どこまでが元の情報で、どこからが補われた内容なのか見失いがちです。まず、このメールで伝えてよいことを短い日本語メモにします。
| 今回の元メモ | 確認できている内容 |
|---|---|
| 受けた問い合わせ | 品番AX-17を1,200個用意できるか。まだ注文は受けていない |
| 現在の状況 | 在庫数量と最短の発送日を社内で確認中 |
| 約束できる次の連絡 | 10月14日、日本時間15時までに状況を知らせる。確認が終わっていなくても連絡する |
| まだ言えないこと | 単価、送料、納品日、無料の追加サービス |
| 相手への依頼 | 今回のメールでは承認や至急の回答を求めない |
このメモに対し、次のような本文が下書きに入っていたら、自然に読めてもそのまま送れません。誤りを見つけるための例です。
Thank you for your order of 120 units of AX-71. We confirm the unit price of USD 4.80 and guarantee delivery by October 14. We will provide free express shipping. Please approve this arrangement today.
日本語では「AX-71を120個ご注文いただき、ありがとうございます。単価4.80米ドルを確定し、10月14日までの納品を保証します。速達送料は無料です。本日中にこの手配をご承認ください」という内容です。この例は点検用で、送信用ではありません。
品番や個数の誤りに加え、問い合わせが注文に、続報の日が納品日に変わっています。丁寧な結びへ直す前に、案件の意味を元へ戻します。
送信前の7項目を、原資料と照合する
チェック表の右欄は、確認する相手や資料です。英文を別のAIへ渡して「正しいですか」と尋ねるだけでは、実際の受注状況や社内承認までは確かめられません。
| 確認する項目 | 英文で見るところ | 照合先・今回の判断 |
|---|---|---|
| 1. 宛名・敬称 | 名前のつづり、Mr./Ms.などが勝手に付いていないか | 相手の署名とこれまでのやりとり。名前から性別や希望の敬称を推測しない |
| 2. 固有名詞・品番 | 会社名、製品名、案件番号、注文か問い合わせか | 受信メールではAX-17。AX-71へ変えない。まだorderとは呼ばない |
| 3. 数字・日付・通貨 | 桁、単位、時差、通貨、日付が指す出来事 | 1,200個と10月14日15時JST。単価USD 4.80は元メモにない |
| 4. 約束・保証 | confirm、guarantee、willなどの主語・対象・条件 | 約束できるのは状況の連絡。納品や送料を確約しない |
| 5. 丁寧さと依頼 | 謝罪、長い前置き、追加の返信期限、不要な続報 | 本日中の承認を頼む根拠はない。必要な説明を残し、不要な依頼を削る |
| 6. 機密情報 | 他社名、内部メモ、未公開条件、引用履歴や添付の余分な内容 | 会社の利用規則と、この受信者へ共有してよい範囲 |
| 7. 署名 | 氏名、部署、連絡先、肩書き、権限が合っているか | 会社で使う署名。AIが作った連絡先や役職を残さない |
3と4は続けて確認すると見落としを減らせます。「10月14日」という数字が元メモと同じでも、deliveryに結び付いていたら別の約束です。単位や通貨の表記そのものを迷うときは、金額・数量・単位の書き方で確認できます。
5は「丁寧な表現を全部削る」という意味ではありません。感謝は残してよく、相手に必要な条件や留保も残します。「返信不要」を付ける場合も、本当に回答を求めていないかを見ます。FYIや返信不要の使い分けは、ご参考まで・対応不要・返信不要の記事で扱っています。
根拠のない約束は、弱い言葉に替えるだけで済ませない
We guarantee delivery by October 14.をWe may deliver by October 14.に替えると、確約は弱くなります。それでも、10月14日に納品できる可能性があるという情報は新たに伝わります。予定を確認していないなら、助動詞だけを替えて送らないようにします。
| 下書きの文 | 元メモに合わせる処理 |
|---|---|
| Thank you for your order… | まだ注文前なので、inquiryへ戻す。品番と数量も修正する |
| We confirm the unit price… | 単価は未確認なので削る |
| We guarantee delivery by… | 発送日も確認中だと説明し、別の文で次の状況連絡を約束する |
| We will provide free express shipping. | 承認も根拠もないサービスなので削る |
| Please approve this arrangement today. | 承認を求める用件ではないため削る |
canとcannot、withとwithout、includingとexcludingも、短い一語で条件を変えます。AIへ再修正を頼んだ場合も、数量・否定・期限・責任範囲が変わっていないかを再度照合します。日本語へ訳し戻して意味をつかむ方法も使えますが、その訳も確認の補助として扱います。
元メモ自体が曖昧なときは、英文だけで解決しようとせず担当者へ戻します。「出せると思う」は確定した発送予定なのか、見込みなのか。「確認済み」は受領の確認なのか、内容の承認なのか。どちらとも取れる情報を、書き手の判断で強い約束にしません。
修正文では、問い合わせ・確認中・次の連絡を分ける
元メモの範囲に戻すと、次のメールになります。名前の欄は実際の相手と自分に置き換え、会社で必要な署名を加えてください。
Dear [相手の名前],
Thank you for your inquiry about 1,200 pieces of AX-17. We are checking the available quantity and the earliest possible dispatch date.
I will send you an update by 3 p.m. JST on October 14, even if we are still waiting for confirmation.
Best regards,
[自分の名前]
[相手の名前]様
AX-17を1,200個ご希望とのお問い合わせをいただき、ありがとうございます。現在、用意できる数量と最短の発送日を確認しています。
確認待ちの場合も含め、10月14日、日本時間15時までに状況をご連絡します。
よろしくお願いいたします。
[自分の名前]
この文でwillが約束しているのは、納品ではなくan updateを送ることです。その連絡時刻を自分が守れることも確認します。状況連絡と確認完了を分ける書き方は、短い一報・途中報告の英語メールでも説明しています。
点検用の下書きから長い文を足したのではなく、誤った確約を削り、いま確認中の項目を戻しました。英文の長さより、受け手が「何が決まり、何を待っているのか」を読み取れるかを見ます。
最後は、実際に送るメール画面で確かめる
AI画面で確認した文と、送信するメールの内容は同じとは限りません。貼り付け先で自動署名が加わる、古い引用が残る、添付を取り違えることもあるので、最後の確認はメール画面で行います。
宛先・CC・BCC、件名、本文、署名、添付を上から見直します。[相手の名前]などの置換欄や、社内向けのメモが残っていないかも確認してください。本文で添付すると書いているなら実際の添付を開き、送る相手と内容が合っているかを見ます。Reply Allや引用の操作自体は、この7項目とは別の送信設定として確認します。
会社のAI利用規則は、下書きを作る前から守る必要があります。送信前に機密情報を削っても、すでに許可されていない環境へ入力した内容が取り消せるとは考えません。扱いに迷ったら入力を止めて社内の担当窓口へ確認し、実名を仮名へ替えただけで十分だとも決めつけないでください。
文法上の不安なら表現を直し、案件の事実が不明なら原資料や担当者へ戻す。7項目のうち一つでも意味を説明できない箇所が残ったら、その箇所を確認してから送ります。