中国語と英語のどっちを社会人は学ぶべきか
中国語と英語のどっちを学ぶべきかは、次のような視点から考えよう。
- 市場規模
- 需要と供給バランス
- 難易度
それぞれ詳しく調べたところ、次のことがわかった。
市場規模
市場規模に関しては、財務省の貿易統計検索で確認できる「国別総額表」にて市場規模を検索したところ、輸出額においては次のような結果だった。
- 中国:72億円
- 中国以外:310億円
合計:382億円
(2019年11月14日時点での調べ)
中国とのビジネスをする場合、中国語と英語の両方が使われる場合が多い。
また、中国以外の国では、その国の母国語、もしくは英語が使われることが多い。
そのため、厳密な数値を割り出すことができないのだけれども、単純にざっくりと「中国以外」の金額の半分が英語、もう半分がそれ以外の言語が使われていると仮定すると、
- 中国語:72億円
- 英語:155億円
- 中国語と英語以外:155億円
合計:382億円
となる。
実際には、「中国以外」の国とのやり取りでは英語がほぼ一般的に使われることを考えると、英語の市場規模の割合は増すと考えるのが妥当だろう。
需要と供給バランス
英語と中国語の需要について
流動的な需要と供給のバランスを知ることもかなり難しいため、ざっくりと転職サイトでの求人件数を需要としよう。
今回調べる転職サイトは、DODA、マイナビ転職、リクナビネクストだ。
DODAの場合
- 「英語」に関連する該当求人数 12,672 件
- 「中国語」に関連する該当求人数 1,348 件
※DODAの2019年11月14日(木)の公開求人 75,822件時点での調べ
英語関連の求人数の方が、中国語のものより、9.4倍多いことがわかる。
マイナビ転職
- 「英語」に関連する該当求人数 1,731件
- 「中国語」に関連する該当求人数 551件
※マイナビ転職の2019年11月14日(木)の公開求人 不明時点での調べ
英語関連の求人数の方が、中国語のものより、3.1倍多いことがわかる。
リクナビネクスト
- 「英語」に関連する該当求人数 4,364件
- 「中国語」に関連する該当求人数487件
※リクナビネクストの2019年11月14日(木)の公開求人 35,901件時点での調べ
英語関連の求人数の方が、中国語のものより、8.9倍多いことがわかる。
需要をまとめると
一概には言えないけれども、求人数を需要とした場合、英語の方が中国語より3.1~9.4倍の需要がある。
英語と中国語の供給について
これも一概には言えないけれども、熱心な語学学習者は検定試験を受けていることを考える仮定してみる。
ビジネスとして英語や中国語を利用するなら、英語なら英検ではなくTOEICが主流で、中国語なら中国語検定試験だろう。よって、この二つの受験者数を比較する。
英語の学習者数(TOEIC)のみ
TOEIC公式サイトによると、公開のある最新のTOEIC Listening & Reading Testの受験者数は、
250万人。
※TOEIC公式サイトの2019年11月14日(木)の公開情報2016年度時点での調べ
中国語の学習者数(中検)のみ
一方で中国語検定試験は受験者数を公式サイトでは公開しておらず、wikipediaの情報に頼ると、2012年時点で6万人前後とされている。
つまり、英語学習者の方が、中国語学習者より、41.6倍多いことがわかる。
もちろん、TOEICや中国語検定試験を受ける人が、必ずその言語の仕事を探すわけではないが、リソースとなりえる情報がないため、これらの情報を利用する。
需要と供給をまとめると
英語の方が中国語より3.1~9.4倍の需要がある。
その一方で、英語学習者の方が、中国語学習者より、41.6倍の供給がある。
言い換えると、中国語の方が、4.4~13.4倍需要供給バランスに優れており、仕事を見つけやすいことを意味している。
もちろん、需要と供給を数値的判断するためのリソースとしては突っ込みどころがあるが、このような情報で正確な情報は開示されることはないため、概算で算出するしかない点を留意いただいたい。
英語と中国語の難易度について
英語と中国語の難易度については、ビジネスで使えるレベルになるためにどっちが難しいかを考える。
そのため、ビジネスで言語を使う必須の場面であるPCの聞く・話す・読む・書くだけではなく、PCに入力する作業も加えて判断する。
難易度をざっとまとめるとこんな感じだ。
- 語彙→中国語の方が難しい
- 文法→英語の方が難しい
- 発音→中国語の方が難しい
- タイピング→中国語の方が難しい
- リスニング→中国語の方が難しい
- リーディング→英語の方が難しい
- スピーキング→中国語の方が難しい
- ライティング→中国語の方が難しい
- 学びやすい環境→英語が有利
なぜか、を説明しよう。
語彙は中国語の方が難しい
英語の語彙はアルファベット、つまり26種類だけ。
中国語は、無数の漢字がある。
そして、英語とは違って、日常生活で中国語を見かける機会も少なく、中国語の漢字のほとんどを知らない状態で学習が始まる。
慣れてくると、割と日本語の漢字と似ているところが多く見つかるので、楽にはなるが、それは英語にもいえることだ。
よって、語彙に関しては、中国語が難しい。
文法は英語の方が難しい
逆に、中国語の文法を英語を簡素化したかのようなものだ。
我々日本人が頭を抱える英語の「動詞の活用」やaとか複数形とか冠詞という概念が中国語にはない。
よって、文法に関しては、英語が難しい。
発音は中国語の方が難しい
中国語の発音には、四声(声調)というものがあり、たとえば同じ「イー」という発音でも、音の高さを変化させて4種類の「イー」を区別しないといけない。しかも、難しい。
この四声(声調)は英語にはない。
中国語の発音には、ピンインという発音記号を覚える必要があり、これが難解だ。
英語の発音は、日本人なら日本語なまりでもある程度通じるが、中国語は厳しい。
よって、発音に関しては、中国語が難しい。
タイピングは圧倒的に中国語の方が難しい
タイピングは、圧倒的に中国語が難しい。普通に日本で育ったのならば中国語の漢字をどうやって打つのかすらわからないだろう。
一般的に、中国語を入力するためのツール(IME)をインストールすれば、中国語で文字を出力できるようになる。
実際の入力は次の3種類ある。
- ピンイン入力
- 注音輸入法
- 蒼頡輸入法
1のピンイン入力というのは、ピンインという発音記号を使う方法。アルファベットなので、一番簡単で最も主流な方法。
2の注音輸入法は台湾では使われている日本語でいうひらがなみたいなものを使う方法。
3の蒼頡輸入法は香港で使われていて、漢字を部分的に分解された漢字の一部を組み合わせて入力する方法。
1のピンイン入力には、当然発音記号を覚えていないと漢字が打てない。ピンインがわからない場合は漢字をコピペしてピンインを探すところから始まる。英語であれば、アルファベットそのものが単語だから、どちらが難しいかは一目瞭然だ。
2と3の入力方法はもう意味不明のレベルとなる。
よって、タイピングは圧倒的に中国語が難しい。
リスニングは中国語の方が難しい
中国語は語彙と発音が難しいことから、それらを知っておかないと聞き取ることができません。
よって、聞き取りに関しては、中国語が難しい。
リーディングは英語の方が難しい
知識量にもよるのだが、中国語の場合は、初級レベルを学習するだけで、漢字を使う日本人である我々にとっては、とても簡単にある程度意味を類推できるようになる。
英語の場合も接頭辞や接尾辞を理解すれば単語の意味の類推はできるようになるけれども、初級者では難しい。
よってリーディングは英語の方が難しい。
スピーキングは中国語の方が難しい
よく英語の発音を気にし過ぎであるといわれる日本語なまりの英語は、実は世界的に見るととても聞き取りやすい英語のタイプになる。インドなまりの英語や、アラビック系なまりの英語や、タイなまりの英語、ロシアなまりの英語にフランス語なまりの英語なんかを聞いて比較してみるといいだろう。
つまり、日本語なまりの英語でOK、十分通じるのだ。
その一方中国語の発音ルールを無視して、日本語なまりの中国語を話した場合、通じない。なぜなら、中国語には同じ発音でも声の高さを変える必要があるためだ。
よってスピーキングは中国語が難しい。
ライティングは中国語の方が難しい
漢字が大の得意な人は例外として、ほとんどの日本人にとって、中国語のライティングは難しいだろう。
全部漢字で書かないといけない。昨今の社会人で漢字を紙に書く文字は、限定されており、そのほとんどが自分の名前と住所くらいだろう。
また、社会人でビジネスをしているなら必ず使用するメールについても、そもそもタイピングが難しいため、中国語でのライティングは難しい。
英語も文法がやっかいではあるが、アルファベットはとても簡単なので、中国語より全然マシである。
よってライティングは中国語の方が難しい。
学びやすい環境→英語が有利
英語も中国語も、今ではオンラインでも学べるようになった。
ただ、比較するとやはり英語の方が世の中に出ているサービスの量も質も違う。
低価格で、より効率的な学習をすることことは、時間のない社会人にとってとても大事。
よって、英語の方が学びやすい。
まとめると
- 市場規模は英語が圧倒的に有利。
- 需要と供給バランスは、中国語が圧倒的に有利
- 難易度は、英語が有利。
ということ。
コスパという観点からみると、費用対効果(コスパ)は英語に勝る言語はないだろう。
ただし、なりたい自分ややりたいことが決まっているのであれば、その市場に絞ればよいのでこの限りではない。
最後に、語学学習をする上でとても大切な二つの観点を紹介する。
言語セレクトに重要な2つの観点
その言語や文化に興味があるかどうか
英語でも中国語でも、その言語を使用している国の文化にどれだけ興味があるかで語学力の伸び方が変わってくる。
英語はその点でいうと、英語を学ぶメリットでも説明している通り、英語圏だけではなく世界のスタンダードで情報収集には欠かすことができない言語である。
その一方で中国語は中国に興味がある人にとって、周りからの参入障壁が高い割に、とても大きな市場がある。
語学は1年や2年しか使わないなんてことはない。一生使える能力なため、やっぱり好きなものを学ぶというのが大事だ。
現在地点と目標地点の差がどれだけあるのか
学ぼうとしている言語の能力の現在地点(TOEICいくらとか、中国語検定何級とか)を数値化して知ることはとても重要。
なぜなら、具体的な現在地点を把握しないと目標地点の距離がつかめず、目標地点にたどり着けるイメージがつかない。渋谷に行きたい場合、今いる場所が東京都内なのか、それとも北海道なのかでは全然違う。
学ぼうとしている言語の現在地点を知って、目標地点を決めよう。
おわりに
今後ずっとその言語を使用していくことになるから、好きな言葉を学ぶのがおススメ。
「需要があるから」だけでその言語を勉強しようとしているのであれば、辞めた方がいい。なぜなら、その言語が好きな人に勝てないからだ。あとからその言語が好きな若い人にどんどん抜かされていくことになるだろう。
逆に英語も中国語も好きではないのであれば、まずはその言語を好きになれるようにしていくことがおススメだ。
それは言語を学ぶというよりも、その言語の文化に触れてみること。
もちろん、言語を学んでいるうちにその言語が好きになる可能性もある。
けれども、言語を学んでもその言語を好きにならない可能性もある。大学へ行った人なら、第2言語や第3言語を言語だけ学んだ経験があるだろう。今その言語が好きかどうか考えればよく理解できるはずだ。
学生のうちであれば、言語を学んでみて好きになるかどうかやってみるのもおススメできるが、社会人になるとその時間があるのであれば、その他の自己投資に時間を当てた方が学習対効果が高い。ムダとまでは言わないが、本来の目的である「収入を上げる」ための行為ではなく、目的から逸れてしまっている。
好きな言語があるのであれば、迷わずその言語を学習しよう。
好きな言語がはっきりしないのであれば、いろんな文化に触れてみよう。